◆ 腎臓内科で高血圧を治療・管理する理由
腎臓と血圧は、一方向ではなく“相互に悪化させ合う”関係にあります。
だからこそ腎臓内科が血圧管理を重視するのは、腎臓を守るためだけでなく、心血管疾患の予防にも直結するためです。
① 高血圧は腎臓病(CKD)の主要な悪化因子
慢性腎臓病(CKD)患者の80〜85%が高血圧を合併するとされ、腎機能が低下するほど高血圧の頻度は上昇します。
高血圧は腎臓の細い血管を傷つけ、腎機能低下を加速させます。
② 腎臓病が進むと血圧も上がりやすくなる
腎臓はレニン・アンジオテンシン系を介して血圧を調整しています。
腎機能が落ちるとこの調整が乱れ、高血圧がさらに悪化します。
つまり、
高血圧 → 腎障害 → さらに高血圧
という悪循環が起こるため、腎臓内科での血圧管理が不可欠です。
③ 心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中)のリスクが非常に高い
CKD患者の死亡原因のトップは心血管疾患であり、
高血圧はその最大のリスク因子のひとつです。
腎臓内科で血圧を適切に管理することは、
腎臓だけでなく心臓・脳を守る治療でもあります。
④ CKD患者には“特別な血圧管理”が必要
一般的な高血圧治療と違い、CKD患者では以下が重要になります:
- 厳格な血圧目標(ガイドラインではより低めの収縮期血圧を推奨)
- 塩分制限が特に効果的
- アルブミン尿の有無で薬剤選択が変わる
- ACE阻害薬・ARBが第一選択
- 利尿薬の使い分け(チアジド系・ループ系)
- 高カリウム血症リスクを考慮した薬剤調整
腎臓内科はこれらの“腎臓病特有の血圧管理”を専門的に行える診療科です。
⑤ 多剤併用が必要になるケースが多い
CKD(慢性腎不全)患者の高血圧はコントロールが難しく、
複数の降圧薬を組み合わせることが一般的です。
さらに近年は、
- SGLT2阻害薬
- MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
など、腎保護効果を持つ薬剤も治療選択肢に加わっています。
腎臓内科はこれらの薬剤を“腎機能に応じて安全に使い分ける”専門性を持っています。
◆ まとめ:腎臓内科で高血圧を診るのは“腎臓を守るための必須治療”
腎臓病と高血圧は密接に結びついており、
どちらか一方だけを治療しても改善しません。
腎臓内科が高血圧を治療する理由は、
腎臓を守り、心臓・脳を守り、患者さんの未来を守るためです。






