目次
タンパク尿とは何か？
こんにちは。四天王寺南門前にある内科クリニック、医療法人慈洋会赤垣クリニック院長、赤垣洋二です。
今回のテーマは【腎臓が発するSOS信号、それが“タンパク尿”】です。
腎臓は、体に必要な物質を保持しながら不要なものをろ過し、尿として排出する重要な役割を担う臓器です。このプロセスの鍵を握るのが、腎臓内にある糸球体というフィルターのような構造です。
通常、タンパク質は体に必要な物質のため、このフィルターを通過せず体内に留まります。しかし、何らかの理由で尿にタンパクが含まれるようになる場合、それは腎臓に異常が生じている可能性を示しています。
タンパク尿の原因とは？
タンパク尿を引き起こす原因は、大きく分けて以下の3つのパターンがあります。
-
生活習慣病が原因
-
糖尿病性腎症
-
高血圧
-
肥満
-
-
免疫や遺伝性疾患が原因
-
IgA腎症（慢性糸球体腎炎）
-
ネフローゼ症候群
-
血管炎
-
-
その他の原因
-
起立性タンパク尿（腎臓に異常がない場合もあります）
-
放置するとどうなる？
過去に行われた沖縄の研究では、尿タンパク検査で異常が見られた住民を17年間追跡調査した結果、タンパク尿が“2+”以上の人は、透析が必要になるリスクが大幅に高いことが明らかになりました。
要注意ポイント:
-
タンパク尿が“2+”、“3+”と指摘された場合、症状がなくても医療機関での診察が推奨されます。
-
詳細は、日本腎臓学会が発行する『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン』をご覧ください。
タンパク尿を改善するには？
腎臓の機能は、一度失われると再生することはありません。しかし、タンパク尿を改善することで残された腎機能を保護することが可能です。
① 食事療法
-
塩分を減らす: 高血圧を防ぐために必須。
-
栄養バランスの調整: 野菜、果物、タンパク質の摂取量を適切に管理。
② 運動療法
-
有酸素運動や筋力トレーニング。
-
近年注目されている“腎臓リハビリテーション”という運動療法も選択肢の一つ。
③ 薬物療法
-
血圧や血糖値を管理する薬。
-
特に“RAS系阻害薬”や“SGLT-2阻害薬”が腎保護作用を持つとされています。
タンパク尿が気になるときのステップ
健康診断で“尿タンパク”の指摘を受けたら、まず以下の手順を試してみましょう。
-
自宅で測定: 薬局で購入できる尿タンパク試験紙を使用してみてください。
-
朝一番の尿で検査: 前日の夜に完全に排尿し、翌朝最初の尿で測定するのが理想的です。
-
異常が続く場合: 何度か測定して“2+”以上の結果が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。
医療機関で行う検査と治療
医療機関では、次のような精密検査が可能です。
-
定量検査: 実際に1日あたり尿中に排出されるタンパク質の量を測定。
-
腎臓エコー: 腎臓のサイズや表面の状態を画像で確認。
これらの検査は、特に腎臓内科のクリニックで行うのが望ましいですが、近くに腎臓内科がない場合は内科クリニックでも可能です。
早期診断・治療の重要性
腎臓病は進行するまで症状が出にくい病気です。そのため、健康診断での異常を放置すると、気づいたときには透析直前…というケースも少なくありません。
気になることがあれば、不安を抱え込まずに医療機関へご相談ください。専門家が、あなたに合った治療法を一緒に考えてくれるはずです。
まずは一歩、早めの行動が未来の健康を守ります！
