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慢性腎不全では、リンの摂取管理が非常に重要です。腎機能が低下するとリンの排泄能力が落ち、【血中リン濃度が上昇(高リン血症)】しやすくなります。これは骨や血管に深刻な影響を及ぼすため、食事療法によるリン制限が不可欠です。
⚠️ なぜリンに注意が必要なのか?
🔹 腎機能が低下すると…
- 健康な腎臓は、余分なリンを尿中に排泄します
- 慢性腎不全ではこの機能が低下し、リンが体内に蓄積します
🔹 高リン血症が引き起こすリスク
- CKD-MBD(骨ミネラル代謝異常):骨がもろくなる、骨痛、骨折リスク増加
- 異所性石灰化:リンとカルシウムが血管壁などに沈着し、動脈硬化を促進
- 心血管疾患のリスク上昇:心筋梗塞・脳卒中などの発症率が高まる
- 腎機能のさらなる悪化:リン自体が腎臓を傷つける可能性も
📊 CKDステージ別のリン管理目標(日本腎臓学会ガイドライン)
CKDステージ | eGFR目安 | 血清リン濃度目標 | 食事リン摂取量目安 |
G3a~G5 | eGFR 59以下 | 2.5〜4.5 mg/dL | タンパク質摂取量(g)×15 mg/日 |
G5D(透析中) | eGFR <15 | 3.5〜6.0 mg/dL | 同上(やや緩和される) |
※リン摂取量はタンパク質摂取量に比例するため、リン/タンパク質比を意識することが重要です。
🍳 調理法の工夫でリンを減らすコツ
✅ リンの種類を知る
- 有機リン:肉・魚・卵・豆類など天然食品に含まれる(吸収率40〜60%)
- 無機リン:加工食品に含まれる添加物(吸収率90〜100%)→ 特に注意!
✅ 調理の工夫ポイント
- 茹でこぼし・水煮:肉・魚・野菜を一度茹でることでリンを減らせる
- 加工食品を避ける:ハム・ソーセージ・インスタント食品・スナック菓子などは無機リンが多い
- 食品表示を確認:「リン酸塩」「pH調整剤」などの表示があるものは避ける
- 卵は白身中心に:卵黄にリンが多く含まれる
- 乳製品は控えめに:プロセスチーズ・牛乳・ヨーグルトはリンが多い
- 出汁や香味野菜で味付け:塩分を控えつつ満足感を高める
🥗 食材選びのヒント
食材 | リン含有量 | 調理の工夫 |
鶏むね肉(皮なし) | 中程度 | 茹でてから焼く・蒸す |
白身魚(タラ・カレイ) | 低め | 煮付け・蒸し料理がおすすめ |
木綿豆腐 | やや高め | 小分けにして量を調整 |
卵 | 高め(特に黄身) | 白身のみ使用する料理にアレンジ |
野菜・きのこ・海藻 | 低め | 副菜に多用して満足感UP |
✅ まとめ:リン管理は“骨と血管を守る栄養戦略”
慢性腎不全では、リンの過剰摂取が骨の脆弱化や血管の石灰化を引き起こし、生命予後に影響します。だからこそ、食材選び・調理法・食品表示の確認を通じて、リンを賢くコントロールすることが大切です。医療機関と連携しながら、無理なく続けられる食事療法を実践しましょう。