目次
慢性腎不全では、たんぱく質の摂取量を適切に制限することが腎機能の維持と尿毒症の予防に直結します。ただし、制限しすぎると栄養不足や筋力低下を招くため、「量」と「質」のバランスを意識した食事管理と調理法の工夫が重要です。
⚠️ なぜたんぱく質に注意が必要なのか?
🔹 腎臓の役割とたんぱく質の代謝
- たんぱく質は体の構成要素として不可欠ですが、代謝されると尿素窒素・クレアチニンなどの老廃物が発生
- 健康な腎臓はこれらを尿として排出しますが、腎機能が低下すると排泄できずに体内に蓄積
- 結果として、尿毒症・倦怠感・食欲不振・意識障害などの症状が現れる可能性あり
🔹 過剰摂取のリスク
- 腎臓に負担がかかり、病状の進行を早める
- 血中の老廃物濃度が上昇し、透析導入が近づくことも
📊 たんぱく質摂取量の目安(CKDステージ別)
CKDステージ | 推奨量(g/kg体重/日) | 例:体重60kgの場合 |
G3〜G5(非透析) | 約0.6〜0.8g | 36〜48g程度 |
G5D(透析中) | 約1.0〜1.2g | 60〜72g程度(制限緩和) |
※医師の指導のもとで個別に調整が必要です
🍳 調理法の工夫でたんぱく質をコントロール
✅ 食材選びと調理の工夫
- 良質なたんぱく質を選ぶ:鶏ささみ・白身魚・卵白などは代謝効率が良く、老廃物が少ない
- 低たんぱく主食を活用:低たんぱくごはん・低たんぱくパンなどで主食からの摂取量を減らす
- 副菜を充実させる:野菜・きのこ・海藻などで満足感を補う(カリウムに注意)
- 調味料は香味・酸味・スパイスで工夫:塩分を控えつつ味の満足度を高める
✅ エネルギーを保つ工夫
- **油脂類(オリーブ油・ごま油・MCTオイル)**を活用してカロリーを補う
- 炒め煮・揚げ物・ドレッシングなどでエネルギー密度を高める
- 低たんぱく高エネルギー食品(市販の特殊食品)も活用可能
🥗 食材のたんぱく質量の目安
食品 | 100gあたりのたんぱく質量 | 調理の工夫 |
鶏ささみ | 約23g | 蒸し焼き・煮物で塩分控えめに |
白身魚(タラ) | 約17g | 煮付け・蒸し料理がおすすめ |
木綿豆腐 | 約7g | 小分けにして量を調整 |
卵(全卵) | 約6g | 卵白のみ使用する料理にアレンジ |
白米(150g) | 約3.8g | 低たんぱく米に置き換え可 |
✅ まとめ:たんぱく質管理は“腎臓を守る栄養の知恵”
慢性腎不全では、たんぱく質の摂取量を制限しすぎず、過剰にもならないように調整することが重要です。良質なたんぱく質を選び、調理法や副菜の工夫で満足感を高めながら、腎臓への負担を軽減しましょう。医療機関と連携しながら、個別に最適な食事療法を続けることが、透析を防ぐ鍵になります。