多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)とは、腎臓に多数の嚢胞(液体の入った袋)ができる遺伝性の病気です。嚢胞が年齢とともに増えたり大きくなったりすることで、腎臓の正常な組織が圧迫され、徐々に腎機能が低下していきます。進行すると腎不全に至り、透析や腎移植が必要になることもあります。
🧠 多発性嚢胞腎の種類
種類 | 特徴 | 発症時期 |
ADPKD(常染色体優性型) | 最も多いタイプ。親から子へ50%の確率で遺伝 | 成人期(30〜40代)に症状が出ることが多い |
ARPKD(常染色体劣性型) | 稀なタイプ。両親から遺伝子を受け継ぐ | 新生児期・乳幼児期に発症し重症化しやすい |
🔍 主な症状と合併症
- 腎臓の嚢胞による腹部膨満感・腰痛・背部痛
- 高血圧(若年期から起こることも)
- 血尿(嚢胞が破れることで起こる)
- 腎機能低下(進行すると透析が必要)
- 肝嚢胞・脳動脈瘤・心臓弁膜症などの合併症も起こる可能性あり
🩺 診断と検査
- **画像検査(エコー・CT・MRI)**で腎嚢胞の数や大きさを確認
- 遺伝子検査でPKD1・PKD2などの変異を調べることもある
- 血液検査・尿検査で腎機能や蛋白尿の有無を評価
💊 治療法と生活管理
✅ 治療
- トルバプタン(V2受容体拮抗薬):嚢胞の増大を抑える効果が期待される(ADPKDに適応)
- 腎代替療法(透析・腎移植):腎不全に進行した場合に必要
- 高血圧治療:ARBやACE阻害薬などで血圧管理
✅ 生活習慣の工夫
- 水分摂取をしっかりと:脱水は嚢胞の増大を促すため注意
- 塩分制限・肥満予防:腎臓への負担を減らす
- 定期的な検査とフォローアップ:腎機能・血圧・嚢胞の状態を継続的に確認
✅ まとめ:多発性嚢胞腎は“静かに進行する遺伝性腎疾患”
多発性嚢胞腎は、初期には自覚症状が少ないものの、腎機能を徐々に蝕む進行性の病気です。家族歴がある方や若年期から高血圧を指摘された方は、早めの検査が推奨されます。適切な治療と生活管理によって、進行を遅らせることが可能です。