人工透析の仕組みとは?:腎臓の代わりに働く治療法
こんにちは。天王寺区の医療法人慈洋会赤垣クリニック院長、赤垣洋二です。人工透析は、腎臓の機能が著しく低下した場合に、体内の老廃物や余分な水分を取り除くために行われる治療法です。腎臓の役割を人工的に果たし、患者さんの体内環境を正常に保つことを目的としています。今回は、人工透析の仕組みとその重要性について解説します。
1. 腎臓の役割
健康な腎臓は、血液をろ過し、老廃物や過剰な水分を尿として排出する重要な臓器です。また、腎臓は体内の電解質バランスを調整し、血圧のコントロールや赤血球の産生を促す役割も担っています。しかし、腎臓の機能が低下すると、これらの役割が正常に果たせなくなり、体内に老廃物が溜まり、体に大きな負担がかかります。
2. 人工透析とは?
人工透析は、腎不全の患者さんに対して、腎臓の代わりに老廃物を排出し、血液を浄化する治療です。主に2つの方法があります:
- 血液透析(HD: Hemodialysis)
- 腹膜透析(PD: Peritoneal Dialysis)
どちらの方法も体内の不要な物質を除去しますが、治療の仕組みや方法が異なります。(ちなみに、当院では、血液透析を行っております。)
3. 血液透析(HD)の仕組み
血液透析は、専用の機械を使って体外に取り出した血液を浄化し、再び体内に戻す治療法です。以下のステップで行われます:
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血液を体外へ取り出す
患者さんのシャント(血管に作られた特別な通路)を通じて血液を体外の透析装置に送り出します。 -
透析器でろ過
透析器(ダイアライザー)というフィルターを通して、血液中の老廃物や余分な水分が除去されます。この透析器は、セミ透過性膜を用い、老廃物や水分だけを選択的に排出します。 -
清浄化した血液を体内へ戻す
ろ過された血液が再び体内に戻され、血液循環を継続します。この過程により、血液が浄化され、体内の化学バランスが維持されます。
治療頻度: 血液透析は、通常週に3回、1回の治療に4時間程度かかります。透析クリニックや病院で行われることが一般的です。
4. 腹膜透析(PD)の仕組み
腹膜透析は、自分の腹膜(お腹の中の膜)をフィルターとして利用し、血液を浄化する方法です。自宅で行うことができるため、通院の必要がないという利点があります。手順は以下の通りです:
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腹腔に透析液を注入
腹部に留置したカテーテルを通じて、透析液を腹腔(お腹の中の空間)に注入します。 -
腹膜を通じてろ過
腹膜がフィルターの役割を果たし、血液中の老廃物や余分な水分が透析液に移動します。 -
透析液の排出
一定時間が経過したら、老廃物を含んだ透析液を腹腔から排出します。この過程を1日に数回行います。
治療頻度: 腹膜透析は、患者さん自身が日常的に自宅で行うため、柔軟な生活スタイルが可能ですが、毎日数回の処置が必要です。
5. 人工透析の重要性
腎機能が低下すると、体内に老廃物や毒素が蓄積し、命に関わる状態になることがあります。人工透析は、腎臓が果たすべき役割を代替し、患者さんの生命を維持するために不可欠な治療法です。また、透析を受けることで、体内の電解質バランスや水分量をコントロールでき、症状の悪化を防ぐことができます。
まとめ
人工透析は、腎臓の機能が低下した患者さんにとって不可欠な治療です。血液透析や腹膜透析などの方法があり、どちらも腎臓の代わりに老廃物を除去し、体内環境を整える役割を担っています。適切な治療を受けることで、腎不全患者さんはより快適で健康な生活を送ることが可能です。もし透析に関して不安や疑問がある場合は、ぜひ医師に相談してみてください。