人工透析において、「血液を体外に取り出すための血管アクセス(バスキュラーアクセス)」は治療の根幹です。シャントやカテーテルの選択は、患者さんの血管状態・年齢・合併症・生活スタイルなどを踏まえて決定されます。以下に、主要な4種類のアクセス方法について特徴と注意点をまとめます。
🩺 シャント・カテーテルの種類と特徴
種類 | 概要 | 特徴 | 注意点 |
自己血管内シャント(AVF) | 自分の動脈と静脈を直接つなぐ | 最も長持ち・感染リスク低い・成熟に時間がかかる | 血管が細いと作成困難・穿刺技術が必要 |
人工血管内シャント(AVG) | 動脈と静脈の間に人工血管を挿入 | 早期使用可能・穿刺しやすい | 感染・閉塞リスク高め・寿命はAVFより短い |
動脈表在化(動脈皮下埋没法) | 動脈を皮下に移動させて穿刺可能にする | 血管が細い高齢者にも適応・感染リスク低い | 穿刺部位が限られる・血流量が少ない場合あり |
長期留置カテーテル(CVC) | 頸静脈や大腿静脈にカテーテルを留置 | 手術不要・すぐに使用可能・緊急時に有用 | 感染・血栓・閉塞リスク高・長期使用は避ける |
🔍 透析治療における注意点
✅ 自己血管内シャント(AVF)
- 成熟まで2〜6週間かかるため、計画的な作成が必要
- 穿刺部位の選定と技術が重要(瘤形成や血管損傷を防ぐ)
- スティール症候群(手指虚血)に注意
✅ 人工血管内シャント(AVG)
- 感染・血栓閉塞のリスクが高いため、定期的なモニタリングが必要
- 抗凝固療法の併用が検討されることも
- 瘤形成や出血に注意
✅ 動脈表在化
- 穿刺部位が限られるため、熟練した技術が必要
- 血流量が少ない場合は透析効率が低下する可能性あり
- 高齢者や糖尿病患者に適応されやすい
✅ 長期留置カテーテル(CVC)
- 感染予防が最重要課題(カテーテル関連血流感染症)
- 透析効率が低く、長期使用は避けるべき
- カテーテル位置の確認と定期的な交換が必要
✅ まとめ:アクセス選択は“透析の質と安全性を左右する”
透析アクセスは、治療の継続性・QOL・合併症リスクに直結する重要な要素です。自己血管シャントが第一選択とされますが、患者の状態に応じて人工血管・動脈表在化・カテーテルなどを適切に選択し、定期的な評価と管理が不可欠です。当院では、シャント対応専医療機関と連携し、シャント管理に努めております。